クスリと生活習慣


 薬物乱用は重大な社会問題と言われています。非合法な薬物ばかりでなく、治療薬として用いられる薬の中にも正しく使用しなくては心身に重大な悪影響を及ぼすものがあります。
 ある日、Iさん(女性、30代)が心身安定剤D錠の処方箋を持参しました。D錠は分類上向精神薬ではなく、勿論麻薬でも覚せい剤でもありません。「心 身」安定剤という名の通り、心の不安、緊張を取り除く作用ばかりではなく、身体の緊張、即ち肩こり、頭痛などを取り除き、安定させる作用もある、有用な薬 です。28日分交付したのですが、2週間後に同じ処方箋を再度持参しました。「税関で没収されました。医院で再交付を依頼したら健康保険が使えないそう で、自費で払います。」と言いました。その1週間後、Iさんは今度は別の医療機関発行のD錠の処方箋を持参しました。「薬をシュレッダーに挟んで破損して しまいました。いつもの病院で再交付を断られたので、別の病院に行きました。」とのこと。その発言を不審に思い、その時に処方箋発行した医院に電話をかけ ている、まさにその時、「急ぐ用事があるので、今度にします。」と処方箋を持って帰ってしまいました。その数日後、Iさんの母と名乗る女性から電話があり ました。「娘の部屋で、お宅の薬の袋に入ったD錠を見つけました。5年位前に私の頭痛薬として病院からもらったD錠を娘が頭痛の時に与えたのですが、その 後D錠ばかりやたら飲んでいるようなので心配です。」とのこと。
 母親が娘の体調を思う故に与えた薬が原因で、D錠がなくてはいられない、いわゆる中毒状態になってしまったようです。薬は正しく使用すれば、有用なもの です。しかし、家族、友人に与える又は、大量に摂取するなど通常以外の使い方をすると、恐ろしい結果を招くことになります。薬局で交付する薬の種類、量は 一人一人異なります。自分の薬を指示通りに自分で服用すること、これが大変重要なことです。
(SI-T)